バンジージャンプを1階から/木屋 亞万
まだ天国にはいきたくない
油断が私を空へと打ち上げる
真っ直ぐ飛んで行く体
その姿から私は花火と名付けられた
とはいえ致命的な飛翔は数えるほどしかない
一度目
生まれ落ちた瞬間
私は天井を突き破り
天を目指した
へその緒で母親とつながったまま
もしも母親の手を父親が握っていなければ
父親が手すりに捕まっていなければ
私は大気圏を離れ宇宙を漂っていたかもしれない
天性の浮ついた心が
私を天へと昇らせる
木のように根を張る術を身に着けて
水になり漂う技を覚えるまでは
足枷をつけてベッドに縛られていた
森で木に紛れて眠り
川で魚と戯れて漂った
だが
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