小満 (しょうまん)/nonya
穏やかな
朝の何処かで
キジバトが鳴いているけれど
耳で
探しかけてすぐやめる
どうでもいいじゃないか
そんなこと
美味しい
朝の何かが
芳ばしい匂いをたてているけれど
鼻で
尋ねかけてすぐやめる
どうでもいいじゃないか
そんなこと
窓際の
ソファに寝っ転がると
やんちゃな蔓草が
玄関の庇に絡みつこうとして
身悶えしているのが見えて
嫌だなと思いつつ
苦笑い
まったく
呆れ返るほど五月の朝
大人になりたての緑
のったりと見守る青
光が作る影は未だ優しい密度
睫毛をくすぐる風は素っ気ない速度
隙間という隙間が
透明な何かで
うっかり満たされてゆく
節穴という節穴が
少し泡立った何かで
どうしようもなく満たされてゆく
弛んだ
朝の彼方で
スマホが振動しているけれど
目を
走らせかけてすぐやめる
本当に
どうでもいいじゃないか
そんなこと
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