かさなってゆく風景/小林螢太
 

 トントントン
 コトコトコト

包丁でなにか刻む音
味噌汁や魚を焼く香ばしい匂い
いつもの朝の風景
ありふれている

それは
繰り返す風景である
そして
同じようでいて
少しづつ変化する、それ


朝のニュースや連続ドラマ
トーストとコーヒー

食べる時間がなくて
一口かじって家を飛び出す
あとから、「お弁当!」の声


呼吸するように、
水を飲むように、
当たり前の日常

それは人により
多少異なるだろう
場所、人、時間、香り、
音、雰囲気、肌触り、etc

そして
重なってゆく、記憶


 コトコトコト
 トントントン

 おはよう


繰り返される
積み重なってゆく
そして、いつか
還ってゆく
その景色の中へ





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