果樹園/葉leaf
散歩者たちが、特に詮索するのでもなく、歩行の余興のように視界の端にとらえておく果樹園。それは、少し中に入ればわかるが、空間を切り開き、うねるようにして迷宮を作り出している、風の身体によって隅々まで踏み込まれた一個の全体だ。古い幹から意想外の方向へと伸びていく太い枝は、さらに細かい枝を八方に伸ばし、そこに夥しく葉が付属する。年を経て密な果樹園にひとたび踏み込めば、植物の濃密な体臭と影によって、途端に方位がわからなくなり、自らの身体が混沌の中で支えを失ったかのように思われる。
農家はたいてい、果樹園を四角形として所有しているが、その四角形もまた、台形であったり、ひしゃげていたり、たわんでいたり、
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