strings/平井容子
夏至に生まれた子だけがよく匂った
しかたないから埋めてしまおう
(いや、いや)
なにか途方もない労働のまえやあとにある
くらいほうへつんのめるようなあの気配
わたしと
へその緒でつながった冷蔵庫のなかで
ありとあらゆるものが凍っている
濡れた手でピッケルをつかむ
振りおろした先のやわらかさにまたひとり涙を流す―――
――― 内側からはあかない瞼がある
月が原色のままぎゅっと収縮してわたしは被爆する
空を痩せさせ清らかに生きるものの影で涼む
わたしを木彫りの鰐たらしめる証拠がどこにある
謎を
とりつくろう劇団員がやってきて弓を手に取り舞台のまくがあく
わたしは花束を握りつぶしながらひかりの棚に上がりのたうちまわる
これが最後だ
開くとか壊れるとか結局いつか一緒だろう
そうかな
そうかもしれない
ほんとうに?
問いかけはいらない
興味がない
なにもかも
それほど美しいとは思わないから
止弦のあとだれも立たない惑星にかなしみより透きとおる雪が降る
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