光/イナエ
 
目覚めはじめた街の夜を 置き去りにして
東京発二〇時三〇分 のぞみに乗り込む

この列車に乗って人はどんな望みを持つのだろう
あるいは捨てたのだろう

 夜と昼の混濁したこの街は わたしには冷たかった
 人間のざわめきの中で 壁を相手にした食事 
 暮らしの気配を消した部屋に囲まれたベッド
 成長する人工岩峰を吹き抜ける無言の風
 わずかに知り合った人はかたまりあって寒風に耐えていた

が つかれた 他人の体温を分けあった生活
それでいて 自分の心を奥深く包み隠した生活につかれた

窓の外を 捨て去られた光が後方へ去っていく
闇が前方から流れてくる

光の粒が夜
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