借り物のからだ/中川達矢
 
 きみの死を少しだけ貸してほしい。すると、きみは少しだけ長生きして、ぼくは少しだけ早死にすることになるのだろうか。それはわからない。むしろ、そうすることで、一緒に死ぬことができるのかもしれない。ただ、それは、誰の望みなのだろうか。
 ぼくの死は、ぼくのもので、きみの死は、きみのもの。代わりに担うことはできない、ひとの死。ぼくは、ただひたすら、ぼくの死を全うする。それと同時に、ぼくの生をも全うしているのだ。
 ぼくのからだは、ぼくのもの、というわけでもない。ぼくが、学校に行って、勉強して、家に帰って、ご飯を食べて、寝ることは、誰の望みなのだろうか。ぼくだけの望みだとしたら、ぼくのからだは、ぼくの
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