ア・ピア/平井容子
 



孤立したネルを超えて
黒い雫が便箋に夜をつくった
止むことのない掘削と
圧搾の雨のことを
どのように記したかはわからない
あるいはここへの地図
そのどれもが息に溶けるインクで記され
あとは痴ほう者のように笑っている



4.終止譜(日没)


生んだことのない星が落ちてくる
あたらしい柑橘のにおいを放ちながら
顔にはひとつきり
大穴があいている
針に糸をとおすように
いつか通過するかな
わかりません
それは奪いかえす歌だったかな
わかりません
そうか

あの説話がどこへ帰着しても
もう、好きなところへいって
いつか、また帰っておいで


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