ア・ピア/平井容子
 



1.障害のある屋根のしたで


虹といた

ほら、また打ちまつがったと言って舌をかむ
仕打ちのむこうの
わたしよりもずっとあどけない家族写真の風景

ギテイが舐めるように時計を見ている
あの日
前奏だけで終わる曲を
口ずさみながら逃げたね



2.馬事


渋谷の滑走路という神話を耳にした
わたしには羽などなかったが
それは寝ざめのたびに再生され
いつのまにかほんとうに
多くのセイレイが飛来するような気さえ
していた

地鳴り
のどから血を吹く恋人たちの偶像が
明日のあさ、あの交差点で打ち上げられる



3.ナデア

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