ピア/平井容子
1.虹
紐といた
気の遠くなるひだまりの路線で
彼のもつれた襟足に
昼の星は木漏れて消えた
2.スターバックスラテの矛盾
おびただしい反則が
やがてあらしを連れて丘を巻く
(なつかしさよ)
目の落ちた通りで∴が倒立する
わたしは本を畳んで屋上から跳んだ
3.交感式
ぺとぺとになった春がおおいかぶさった
肌のしたでぐっと舌を丸めて待つ
木の芽が老いて腐っていく
くさいかな、と言って笑ってさしだした
いくつものことづけ
4.終止符(夜明)
どの詩にも同じフレーズを忍ばせた
あそぶかろやかなかなしみ
いてほしいものがなかったとは思わない
ひかる無数の菜の花
絶えず呼吸していた
でももう死んでしまった場所に
とりあえずでたらめな歌を添えて
止血 わたしがわたしたちへ至るために
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