誰かが/ボトルシップ
二十歳になる
僕が積み上げてきた記憶は欠陥だらけで穴だらけだ
中学三年生と高校一年生の夏休みに一体何をして毎日を過ごしていたのか全く思い出せない
小学校の頃の友達の顔をほとんど思い出せない
初恋の女の子の下の名前をどうしても思い出せない
そんな不安にさいなまれる度に僕は生まれて最初の記憶を探る
TSUTAYAでドラえもんの映画を借りた時かもしれない
母親の買ってきたアイスバーを冷凍庫から取ろうとしてひっくり返って頭を打った時かもしれない飼ってた
トカゲが廊下の隅で固くなってた死んでた時かもしれない
そうして少しずつ記憶の細くて脆い糸を慎重に手繰っていく
今までの記憶についた
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