白歴史/村正
 
うつ伏せはろくでもない夢をくれる
瓦礫の下の手を掴んで目が覚める
マントを引きちぎって
黒のペンキをぶちまけた


それを誰かがみていた


無二に焦がれて詩を贈る
ちぎれた紙切れが脳を横切る
血が澄みきる前に閉ざした
黒のペンキをぶちまけた


それを誰かがみていた


こぼした理由に蓋をした
はりぼての裏の脅迫観念
落としたから貶めたという
口元がひどく歪んでいる


誰も歴史の色をたずねない
鏡にはまだ青白い


かつて鮮やかだったはずの
決壊のしずくには
塗るべきだった色がにじむ
戦わないすべに気付くための透明度
漂白観念になり漂泊する


それをみていた
鉄の傘を差す見知った顔


要らない覚悟が多すぎた
仕様がなく降り出した黒い雨の中
傘をたたむ覚悟をした
本当は白かったという
物語を語る時がきた
シャツを汚していく黒いしみを
あなたはもう
咎めることはない
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