しめらない/鯉
ったのに手をつないでは
いなかった、互いが足をついばんでいた気がする、だけど
したのは塩辛さだけで、ぼくらはけっきょく指を土に刺す
ことしかできない。それだけしかできない。決して。
コンクリートの下に蝉のいつか生まれ損なった結晶がある
とか、誰か言っていた、ぼくたちは掘削するために靴の音
を鳴らし続けているに違いない、たぶん、ロールアップが
下手くそで、足が見えたときの音の響きは微妙に違うから
まだ出てこないだけで、じきに土の下から鳴き声は聞こえ
てくるはずだし、手足はそれぞれつめたく光るわけだから
ほんとうは、とまで出かかったものを、嚥下して、消化し
てしまって、ぼくは忘れてしまう、指に張り付いた虫の体
はポプラの樹液を含んでいた、それだけは覚えている。
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