博愛テニスラケット主義/カンチェルスキス
かった。作り方もわからなかった。用意できそうなのは、テニスラケットだけだった。というか、おれはテニスラケットは常に持っていた。何のためかというとおれにもわからない。誰だってそうだろう、人間生きてれば急にテニスラケットを振りたくなるときがあるものだ。厳密に言うと、振り抜きたいと思うときがあるものだ。ないのならあなたは人間ではない。むしろおやつだ。今後おやつにされてもひと言も文句を言ってはならない。降り抜くと言っても、わたしの場合、ぶんぶん振り回すのが好みだ。テニスラケットをぶんぶん振り回す。テニスラケットをぶんぶん振り回すわたしだ。私だ。←俺だ。テニスラケットをぶんぶん振り回せば、並大抵のことでは人
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