赤いさくら/月乃助
{引用=
陽炎に
雪 みあげれば
あっさりと あっさりすぎるほどに
春のよそおいを見棄てる
サクラでした
生の 爛漫が閉塞と終焉のはじまりなら、
未完でありつづけることを いたいほど心に願う
真実の花の色をたしかめたくて 目をとじた
満たされないことに 僕は、今日 とても懸命でした
人知れず カタカタと膝をふるわせ
時や世に 人であるという重石にあらがい
良い人のふりに 他人のために少しの涙をながす
イカサマ師さながら 自らをだまし
歴史画に名を残す嘘つきになろうと
心をくだいてみる
常人であろうと身を
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