手のひら/寒雪
 
それは昔の話
ひもじい思いばかりして
街をうろついていた頃
ぼくの手のひらは
いつだってからっぽで
突然降り出した
温暖化現象の後ろに隠れてばかりの
大粒の雨水を
何度も何度もつかんでみるけど
開いた手のひらには
いつだって水滴一つついてなくて
ぼくには失うものがなにもないことを
ずぶぬれの中気付かされてきた


そしてそれから
太陽でさえも覚えていないくらい
長い時間の後
ぼくの手のひらには
かすかだけど
わずかだけど
握り締めて頬擦り出来るだけの
なにかが感じられるようになった
土砂降りの日には濡れないように
暴風の日には飛ばされないように

[次のページ]
戻る   Point(1)