手のひら/寒雪
それは昔の話
ひもじい思いばかりして
街をうろついていた頃
ぼくの手のひらは
いつだってからっぽで
突然降り出した
温暖化現象の後ろに隠れてばかりの
大粒の雨水を
何度も何度もつかんでみるけど
開いた手のひらには
いつだって水滴一つついてなくて
ぼくには失うものがなにもないことを
ずぶぬれの中気付かされてきた
そしてそれから
太陽でさえも覚えていないくらい
長い時間の後
ぼくの手のひらには
かすかだけど
わずかだけど
握り締めて頬擦り出来るだけの
なにかが感じられるようになった
土砂降りの日には濡れないように
暴風の日には飛ばされないように
な
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