一輪挿し/灰泥軽茶
おばあさんが畑を耕していると
赤茶けた色に長方形におちょぼ口がついた一輪挿しが
いくつもいくつも出てきた
そこは古くから陶芸が盛んな町
今はない窯元があった土の下に陶器だけが眠っていた
その陶器は釉薬が使われておらず
長方形の顔に二重線がよたよたと描かれ
おちょぼ口のねもとのまわりに点が打たれているだけで
生活感が溢れていて野暮ったい
おばあさんはずいぶん前に亡くなったけれど
その一輪挿しに魅かれてもらった時のように
いくら眺めても安ぽっくはならず
時を経ても何も変わらず朴訥な佇まいを
わたしの心に映しだしてくれる
戻る 編 削 Point(8)