一輪挿し/灰泥軽茶
 
おばあさんが畑を耕していると

赤茶けた色に長方形におちょぼ口がついた一輪挿しが

いくつもいくつも出てきた

そこは古くから陶芸が盛んな町

今はない窯元があった土の下に陶器だけが眠っていた

その陶器は釉薬が使われておらず

長方形の顔に二重線がよたよたと描かれ

おちょぼ口のねもとのまわりに点が打たれているだけで

生活感が溢れていて野暮ったい

おばあさんはずいぶん前に亡くなったけれど

その一輪挿しに魅かれてもらった時のように

いくら眺めても安ぽっくはならず

時を経ても何も変わらず朴訥な佇まいを

わたしの心に映しだしてくれる
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