花/ロクエヒロアキ
 
っとだれも知ることがないのだろう
それでも
このいびつなかたちを
しあわせと呼ぶことに
かまびすしい怒濤に足をさらわれることなく
確かにそっとうなずいたから
希望に調温された水だけを吸うような
純粋培養した花を
二度と
見ることがかなわなくなっても

雨がやんだよと
掠れた声できみが言う
無言のままうなずいたぼくは
床に放り投げられたままのシャツを
甲冑のように身に纏う
ぼくら特製の静謐を
釦と釦穴のすきまに
証のように寄り添わせて
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