花/ロクエヒロアキ
 
世界はこれだけ広いのに
ぼくらの秘密を隠す場所だけが見当たらないから
なれない手つきでこしらえたマントにくるまり
息をひそめ
いつも
なにをしている最中も
待っている

あたためすぎた牛乳で
おんなじように火傷した舌
でも
ぼくらのなかには
お互いを傷つけあうための刃物はない
そんな欠落した辞書を
くらやみのなかでそっと開いては
愛の意味を調べあい
ほほえみあうけれども

なんとなく
にぎりしめた拳のなかで
血潮は
すこしずつにごってゆくようで
ああ
ぼくらの関係は
どんどんどんどん透明になっていくようで
鳥のように空中で死んで墜落しても
きっと
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