マニキュア/永乃ゆち
マニキュアを塗って
少し特別な気になっていた
真っ赤なマニキュア
小指だけは黒
趣味が悪いと笑われた
それでも
特別な気になっていた
あなたの選んだ人は
薄いピンクのマニキュアを丁寧に塗っていた
その細い指は
綺麗に野菜を切り
綺麗に皿を洗う
そんな指だった
私の指は
独り歩きして
慈悲のような優しさを
愛だと勘違いして
特別な気になっていた
あなたの選んだ
あの指は
決して
特別な物じゃなかった
ごめんねさよならありがとう
新月の晩に
私はマニキュアを落とした
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