甘い/ウデラコウ
春の夜に
誘われて 君の待つ あの場所へ
いるのか いないのか わからないのに
なぜか僕は
誘われるまま
春の夜に
かすかに 香る あの甘い匂いは
君のかおりか
または 苺のかおりか
それを確かめるために 僕は
月明かりだけが 残る空に
君が見えなくならないようにと
雲が寄らないよう 願いをこめて
約束も なにもないけれど
どうしてか 君がいるような気がして
あの香りの向こう
朝日の覗く前に
この甘い 甘い 甘い 香りが
消えてしまわぬよう
僕の手の中に
隠してしまえるよう
春の夜に
音のない 酷く静かな 夜に
君に似た 甘い香りをたよりに
君を探しに
僕は ゆく
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