新天地へと/ロクエヒロアキ
 
けで
わたしは強奪したいのだ
「強奪」
その可能性を信じてみたいのだ
わたしを見つめるあなたのなかでたぷたぷと揺れる液体を固体にしてしまい
掠め取ってこの風呂敷包みのなかにしまいこみ
そうしたらきっと大切にするよ
わたしはわたしとして
ここにも、この場所にも存在しつづけるから、
「お元気で」なんてありきたりな挨拶もいらない
わたしを見ているあなたの瞳を
瞳にこころがあらわれないというのならば指先を、口許を
最初から最後まで見つめつづけたまま
たったひとつの新天地へと船出する
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