忘れてしまった/ウデラコウ
 
言葉の紡ぎ方をしばし忘れておりました
あまりにも喪失が大きくて

なくした なくした なくした と
途方にくれておりました

私には あれが全てなのだと
泣いて わめいたけれど

誰も見向きなどせず
日は昇り 繰り返すだけでした

夜は明けても
私から 暗闇が抜けることはなく

いとおしいという思いが全て枯れて
何もかもが
消えたところに

唯一あったのが

言葉でした

その頃にはもう 私は
色々なことを忘れて
残されたそれを どう扱えばいいのか
まったくわからなかったのですけれど

いくら見向きをしなくても
それがいなくならないものです
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