起床/三田九郎
 

あっちとこっちの
境い目をうとうとしているとき

聞こえてくる鳥たちのさえずりに感情を撫でられる
透き通った優しい手

昨夜の波立ったわたしが嘘のように
帰って来たわたしが
少しずつまぶたをひらく

もうろうとした足取りで
ポストに新聞 台所でコーヒー

いつもの動作がネジを巻くようにして
わたしという人形を作り出していく

コーヒーの苦味
新聞の見出し

規則的な動きがわたしを呼び
優しい手を振り払い
昨日までのわたしになる

永遠にそこにいたい
あっちとこっちの境い目
淡い淡いわたしの内部

叶うことのないもの
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