すこしさき/灰泥軽茶
時計の針が動いている
文字盤も長針短針もない
白い壁に
秒針だけが時を刻んでいる
明るい部屋に白いカーテン
外にロケットがいくつも飛んでいくのが見えている
陰のある観葉植物に
レモン色の照明がいい匂いをミスト状に発散している
黒い柔らかな球体のソファーの中で私は少し浮き
薄くて分厚い電子雑誌のページをめくっていると
この世界もぺらりとめくれてしまうのじゃないか
秒針の一定のリズムを聴いていると
私の心臓の音もだんだん大きくなって重なり
鼓膜の奥で遠くから小さな声で
オペレーターの声が聴こえてくる
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