最終列車/村正
 
生まれた時から軋みを聴いている

トンネルばかり走る列車の足音だ

時々思いがけない景色が見えて

映した窓を切り出しては

懐かしい無人の駅に送る

随分と乗り換えないでここまできた

切符をくれた女性とは幼い頃はぐれた

彼女に似てしまったのだろう

席を譲っては壁にもたれている

あと少しありふれた車両に居座りたかった

列車は不規則に走っていく

降りたい駅もたくさん見つかったが

そんな時に限りドアが手動だった

開かないドアへの注意なんて

最初からないのかもしれない

見知った顔が個別の車両に乗っていく

そして各駅停車
[次のページ]
戻る   Point(3)