きぐるみ/三田九郎
 
正しさ醜さにくたびれたときひもとくもの
たとえば詩集

靴紐を解いて
靴下を脱いで
握り締めていたものが失われ
冷気にじかに触れ

はだしだ
ぼくははだしだ

裸体 その尊さを噛み締める
たとえば浴槽にて

脱ぎ捨ててしまいたい
ぼく
その精神を
握り締めているものを

守りたいがために手にしたもの
身につけたものが
ぼくを閉じ込め
圧していく

鏡の前の
このきぐるみは誰のきぐるみ

裸体になるため
ぼくになるため
どこへ行こう
どこへ行こうか
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