街について/Debby
ら生きている。雨はもうずっと遠くに去ってしまった。集合暖房を使う季節の終わりは彼女にとって良かった。花はいつまでも育たなかった。とても良かった。
街にはもう誰もいなかった。大人たちはどこかへ消えてしまった。子ども達は家々に火を放って、手をつないで踊った。とても良かった。まるで、何もかもがそこから始まるみたいな気がしたものだ。春は良かった。集合墓地にまで桜を植える町で、君たちは育った。死者たちすらハイキングのハムサンドを楽しみにしている気がしたものだ。なぁ、僕のたまごサンドと君のジャムサンドを交換しないか?
雨が降り始めた。身を切るように冷たい春の雨だ。雨が降る日も良かった。少し待てば雨は止むと知ってたからよかった。そして僕たちはセルフィユを植えた。スープにすると、うまいんだぜこれ。
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