向こう側の人/うみこ
 
まだら猫助がゆく
いつもの道
誰かが落としたパン菓子
甘い出来事を
拾い集めた夕暮れ

街がほどけてゆく
線路の上で
夕陽が犬釘に染みている
色違いの銀色を見分けるように
不思議な電車がすれ違う

忘れられた日々が擦り切れて
レールの上で金切り声をあげている
けたたましい音と共に
奇妙な電車が通り過ぎ
少し沈黙したあと
ゆっくりと遮断機が上がる

遠い街で
僕は探している

懐かしい香りや
目印があるわけでもなく
ただ、迷子になっているみたいに
ずっと探している

僕には応えられない出来事に
気持ちまで立ち止まって
赤信号を眺めてる


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