向こう側の人/うみこ
まだら猫助がゆく
いつもの道
誰かが落としたパン菓子
甘い出来事を
拾い集めた夕暮れ
街がほどけてゆく
線路の上で
夕陽が犬釘に染みている
色違いの銀色を見分けるように
不思議な電車がすれ違う
忘れられた日々が擦り切れて
レールの上で金切り声をあげている
けたたましい音と共に
奇妙な電車が通り過ぎ
少し沈黙したあと
ゆっくりと遮断機が上がる
遠い街で
僕は探している
懐かしい香りや
目印があるわけでもなく
ただ、迷子になっているみたいに
ずっと探している
僕には応えられない出来事に
気持ちまで立ち止まって
赤信号を眺めてる
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)