色盲/一尾
ているという状況に自分の足が浸かっているにも関わらずそれについて行動を起こす気がしないばかりかほんの指一本動かすのも厭だという気持ちがあってその認知を無表情で咀嚼するのにそのときは忙しかった
感情とか感慨とか気持ちとかいわゆるこころというのは浪費され擦り減っていくものなのだということを当時の私は生まれて初めて知ってただそれを悲しいと思うのも煩わしく「もうあくにんとしてじんせいをまっとうしたい」とそういうことばかり考えていた
私はあなたのせいでこんな風になってしまったのだからあなたも私の為に破滅すべきだわ
というアイラブユーの信号が一体何色で光っていたのか色盲のふりをしているうちに本当にわすれてしまったけれど多分再び私に向かってそれが点滅することがあっても私はまた色の分からないふりをしてあいまいに目を細めるだけなのだろうという気がしている
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