スピード/寒雪
 
いつの頃からだろう
周りの景色が
回転するパノラマみたく
勢いよく回っていることに
意識が覚醒して
回転する時間軸の後を
ついていこうとするようになるのは
スピードを落として
落ち着いてみようとしても
ポロロッカみたく
周りを猛烈に侵食しつつ
歩みを止めない景色に
焦りまじりにため息を一つ


もしかすると
もしかしなくても
昔から
ぼくの周りを
取り囲んで離さない
その景色は
息も切らさず
ずうっと
メトロノームの速度に合わせて
走っていたのかもしれない
ただ
それをぼくの体なのか
それともぼくの心なのか
とにかく
ぼくの中に埋め込まれたなにかが
今頃になって
耐えられなくなった
そして
いずれ見えてくる
断崖絶壁が最早
目を凝らしたら見えてしまう
そんな距離まで来ていることを
嫌が応にもわかってしまう


そんな絶望にも似た感情を
飼い慣らし
ぼくは少しでも寄り道出来る場所を
懸命に探して
今日も今日とて前進を続けている
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