あるかないかの胎内/ざらざらざら子
熱をおびたからだが大地にめりこんで、しめった土にすべてつつみこまれたとき胎内とつぶやいた、声にならなかったけれど、それはうつくしいひびきだった。
胎内はわたしのなかにもあるんでしょうか?と受話器のむこうのカザカミさんに聞いたら、あるとおもえばありますないとおもえばないんです、と言われたのでわたしは受話器を置いてさめざめと泣いた。6月の雨が振りだした。
胎内には終わりのない草原が広がっていて、ぴんくやきいろの花がさきみだれてる。そこでははだかの子供たちがおおきくなってしまった子供を食いながら誕生をまちかまえている。満ちている。みずの音で。受話器をみみにあてがえば子供たちのささやきが聞こえる。
あるとおもえばあります/ないとおもえばないんです
半回転した思考が夜空を舞う、きみとはここでサヨナラだ
わたしは土のなかで胎内とつぶやく、つぶやきつづけなければならない
あるかないかは別として世界は回転しつづけるから
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