渋谷の公衆便所にて /
服部 剛
渋谷の公衆便所に入ったら
「ほらおとっつぁん、チャックを閉めて」と
初老の息子は傾く体の親父を支えて、言った。
なんとか息子に支えられ
よたつく親父の背中には
(いたる)と3文字、縫われており
親父の名前が(いたる)なのか?
かれらの歩みは一体何処に(いたる)のか?
人の情けのいたる場所について
あれこれ考えながら
「友愛のモヤイ像」を横切り
僕は雑踏を
何処までも歩いていった
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