靴/
 
わっ!!
と大きく叫んでみろよ

夕焼けが目に沁みて
俺の目玉はぐっしょりだ

赤とんぼ 赤とんぼ
俺の体も染めてくれ

毎日 つま先を踏んで歩いてみても
未だに自分の影は捕まえられず

男の中の男になりたい
誰だってそう思うだろ?
汗で光る背中を見せてさ

肉を喰らって喰らって
満腹になった腹を天井に映して
俺は涙を流した
今までこんなに泣いたことは一度も無い
こんなに悲しくなったことは一度も無い
それが俺の生き方さ

眩しくこぼれる陽の光を浴びて
貧相に骨の浮き出た背中を焼いて
俺はますますやつれていく
賞味期限切れのスルメのように頼りなく

踵の破れた汚いスニーカーを蹴り飛ばし
俺はまた始めから走り出すことを決意した

今の俺なら早く走れる
鶏よりも
ネズミよりも

だから明けて間もない朝に向かって
わっ!!
と大きく叫んでやるぜ
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