共同幻想/寒雪
 
たいてい
はじまりは不器用なままで
なんとなく
ふわふわとただよう
周りの空気を
ぼくのぶしつけな言葉で
傷つけたくなくて
いつでも
ぼくときみたちの溝は
冷然としていて


それでも
差し出されていると
迂闊にも思い込んで
つい
見えている手のひらを
手元に手繰り寄せてみても
そこには
書き損じたメモだけがあって
ぼくの心は
いつまでも
充満している雰囲気の
質量に耐え忍んでいて


いつになれば
浮かび上がるんだろう
ぼくときみたちと
互いに見ているものが
幻で
ほんとうは
一光年も先に存在している
という
動かしがたい事実が


今日も
月はただ
ぼくときみたちの顔色を
青ざめさせるために
ゆっくりと昇ってくるんだよ

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