珈琲ください/三田九郎
苦い
ぬるい
ひとくち含んで
ひとつふたつ
浮かぶ
途中で
彼に出会い
その本に出合った
気持ちが向かうのは
目下 そこにあるもの
急な雨
傘を持たない女
貸すに貸せない か
声をかける か
ここに来なければ
これをしなければ
というであいが僕を組み立てていく
ひとくち
ふたくち
珈琲が僕を組み立てていく
紅茶だったら
別の本を手にしていたら
いま 僕のかたちは違っているだろうか
すれ違い
触れなかったものの数だけ岐路はあり
別の僕はいなくなった
無数の岐路の終着駅で
次はどこに行こうかな
珈琲ください
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