行き止まり/寒雪
 
降りしきる悪意のつぶてを
全身一杯に浴びて
心の悲鳴に耐えながらも
歩いた先には
ところどころに
四十男の無精ひげに似せた
茶色いコケがうっすらと生えた
生気を失ってしまった
ブロック塀がそびえ立つ
乗り越えようと
手をかけてみるが
指先に痛みが宿るだけで
いつまでも無駄な努力と知る
ならば代わりに
ぼくの声だけでもと
塀の向こうに届けてみる
静かに流れる風の音に紛れて
向こうから反射した
ぼくの言葉が
耳に幽かに響いてくる
何度も繰り返しているうちに
気が付くと
ぼくは信じられないほどの
絶望感に打ちのめされて
そこから引き返すことも
出来なくなって
ただ耳鳴りに成り下がった
ぼくの言葉を
ただただ噛み締めている
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