変化/寒雪
 

燃え盛る炎を前に
書き連ねたノートを
次々と
呼吸している炎の口目掛けて
無愛想に放り投げて
咀嚼されて
短い時間のうちに
爛れてモザイクみたいな
灰に変わってしまって
木の棒でつつくと
あっという間に形を変えて


墓石代わりに
埋めた穴の上に
無造作に置いただけの
缶詰の表面が
雨ざらしで
風に殴られて
すっかり化粧がはがれて
茶色く剥げ散らかして
疲れた目から遠ざけようと
缶詰をただ地面に沈めて
見えなくしてしまおうと
力を入れて踏みつける


血反吐を吐いて
体のあちこちから
強烈に自己主張する
ぼくの記憶を垂れ流す
黄色い膿の我侭っぷりに
すでにぼくの体は
堕ちていくだけで
なにもぼくを慰めたりしない
死んで完成するなんて
頭のいい人間のたわ言


朽ちていくことが
考えられない脳味噌にも
はっきりと楔を打ち込んだその日から
ぼくは悠久の忌々しさを呪いながら
それでも大地に少しでも益を残したいと
日々悶々と祈り続けている

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