ハヤブサ/芦沢 恵
 
雪解けの時を待った
土を食べたくて

小さなシャベル片手に
まっすぐ真白い粉塊の一点めがけ


(吸い込まれる) 

くらいに感じてくれたらいいな

そんな気持ちの柔らかさで
すっと その先端を・・・



(水)に当たった!



そうだったのか


気づかなかった


隼は300km/時で

同じ仲間を水面に叩きつけ

それを身の一部に置き換えて
生きている


その水面のただ一点に

悪意のない先端が
当たってしまった


そんな春のはじまりを


誰も


「残念な幕開けでしたね」


などと

けっして言えないのだから




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