5月のバラ/wako
その何気ないひとことに
心は固まってしまった
季節は巡って
またバラの花が咲く頃
立ち止まって
うずくまっている間に
バラの季節は何度通り過ぎたのだろう
バラを見た様な
見なかった様な
降り注ぐ五月の光の陰で
無数のバラの思い出がうごめく
古い手帳に残る色褪せた花びらさえも
あの日を一気に再現させる
私の記憶の庭園には
色とりどりのバラが咲き
花びらに光る露のひと粒ひと粒に
虹と同じ色の思い出がざわめき
押し寄せる
身動きが取れない程に
抜け出せない程に
映像が突然途切れる様に
思い出はプツリと途切れるけれど
バラは萎れる事なく
止まった時の世界で咲き続ける
そして時々
私の季節の感覚を狂わせる
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