豆腐夫婦/灰泥軽茶
 
週に二、三回ほど通る道の豆腐屋さん

ほんのときたま買って帰る

綺麗な水の中でひっそり漂う豆腐や

甘くてじゅわっと口の中で広がるお揚げさん

グレープフルーツぐらいに大きくて

いつも卯の花やらハンバーグ、餃子などに詰め込むおからなど

なにより夫婦二人揃って人柄が良く商売人の顔つき

お爺さんの手はクリームパンみたいに分厚くて

いつもお金を渡してお釣りをもらうときには

その手をじっと眺めては感心する

それが先日

しばらくの間お休みしますの張り紙

シャッターは降りたまま

通るたびに早く開かないかなあ

何事もなければいいのにと

豆腐の優しい味と分厚い掌の輪郭を思い出し

通り過ぎて行く









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