「しののめはあなたのなかのまるい眠りに棲む」/キキ
 
いまはただ
雨が降り
石にしみるまま
あけないおくで翳のかたちを追っている
ひがしの空だけが
ゆるやかに
くちびるをひらき
すきまから虹彩をのぞむ
わたしは
まるい眠りを
かきわけてゆくなかで
おもう
雨の泡沫
栞をはさんだ
あのページには
「すん」
とあなたが繊維をまいた明るい翳り
そしてわたしのなかにも
足跡ひとつを
しみ残し、

あかつき
ただ、ただ

歌えば いい

今日
あなたが
なにものであろうとするのかは
朝食のあとに
決めてもいい
今日
わたしが
りんかくを持てる日なら
被膜になりたい
目覚めのわるいこのまぶたの名は

あかつき

わたしは

 しののめ


指を差したほうから
ひともけものもやってきて
わたしの子宮をたたく
「枯れない」
そう
泡沫は雨だったのだから




戻る   Point(21)