383/鯉
がら屁を口から放る。わたしの脳はもはや強烈な発酵臭にまみれ、濃い夜を溜め込んでいる。トイレに顔を近づけていると、外が焼け焦げていくのを感じた。
383
蝿が雪の一握に止まっていた。ぼくは蝿の甲斐甲斐しさと狡猾に身動きができなかった。蝿は澄んだ青のまま、路傍の漆喰の塀に積もった雪に胡座を掻いている。ぼくはただそのさまを見ている。雪は寂静とその位置を変えていることなど微塵も感じさせない。乱反射するひかりがぼくの網膜を囀るように犯していく。蝿は、死んでいるのか生きているのかわからないが、風が吹くのに任せてわずかに揺れていた。「晒し者みたいですわ」墓守がぼくの横で口ずさむ。ぼくは頷きもしないで蝿を摘まんで、塀の外側に投げた。
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