ひとへ/日下日和
 
過ぎ去るものがあって、僕は奏でられているものを聞いている
耳から耳、手から手
それから

夕立に降られそうになって、傘を買った
小さく折りたたまれた傘で、雨が降らなかったので広がることはなかったが
鞄の中にしまいこみ、雨があればいつでも

電車の窓に映る影はたくさんあって
いったいどこまでがここにあるのか
どこへ走るのか
足音もなく
はやく過ぎていく

それから

僕らには空気の重さがあって、夜の満ちた匂いがあって、朝明けの遠い記憶があって
なだらかな平行線がゆっくりと触れて

浅い川を見た
夜があったので底は見えないが
流れが僕らに吹き込んだ

泣いたね。笑ったね。

向こうのほうで花火
すこしだけ、見えた
戻る   Point(6)