無題/南条悦子
 
体内において鼓動と呼吸があやまった連動を始めたのだ。

飽和する秩序、脈拍の亢進、浅薄な空気の多層、大気の緊張・・・冷たく、苦しい。私は布団を鷲掴みにして、赤ん坊のようにして包まる。寒い。暖かい。世界の切断。輪郭への参入。

すなわち、環境と関係する。性欲の迸りと支配による苛立ちと痛み。呼吸は荒々しくある。うるさくある。・・・大量にある。

加速した未来が怒涛に流れ込む。透徹した肉体であるところの身体はただそれが駆け巡っているのを感じているばかり。掴もうと手を伸ばせども、つるつると滑り落ちる。

そう。公園で幾度も幾度も手で掬ったけれど、間隙から僅かに漏れ出てしまい、ふ、と気を抜けば、たちまちにして崩壊し、過ぎ去ってしまう、あの砂粒の時間−−そして、感触。あるいは、空間。

すなわち、空間の凝縮による時間の膨大な振動。それはさながら、巨大隕石の衝突のよう。過疎と過密の輻輳。けれど、持ち堪える私。

未来は時を刻むことをやめ、闇の底にある硬質なガラス時計は怪しげに光る。・・・事態の収集。勢いの低下。一つへ纏まりを見せる臓腑の面持ち。つまりは、求道の徴。
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