「少女の指で書かれたカルテ」/ベンジャミン
安そうな申し訳なさそうな
そうして白くうつむいたまま
そうだ百合の花のような表情だった
少女をひどく叱ったお母さんらしき人は
実際ひどく正しかった
なぜなら「見知らぬ男性にうかつに近づいた」
そこにまったくの警戒心がないことに対して
※
少女の指の感触が右頬に残ったまま
お母さんらしき人に手を引かれていく
少女が僕をちらっと見たから
僕はくしゃくしゃの笑顔をつくって
小さく手を振った
それが正しいのかどうかわからないけど
実際それくらいしか僕にはできなかった
※
しばらくして僕は
あの少女のカルテ
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