冬の虜囚/寅午
 
降りしきる雪
積雪してゆく雪
夜がもう一回りしてきたように空はくらがり
冬の沈黙がぼくたちの町のうえに
いくえにもみえない層となって積みかさなっている

雪は不断に降りつづき
町は白の純度をまして
建物も、ひとも
モノクロサイレント映画のようになる

謙信公の像のうえにも
協会の十字架にも
川のくらい水面にも
雪はふる
冬のきびしい教えを伝えひろめるように降りつのる

せつせつと教えをたれる雪のしたで
万物はなべて、うつむいて沈黙をまもっている
吼えたける風のほかは
だれも口をさしはさまず
いつまでも冬の言葉を聞きながしている

町ゆく人影はまばら
靴底には3,4日まえの雪がこびりついている
心のひだにまといつく
白いかげをふりはらい
ぼくたちはいつ雪になるのだろう、と
子どもじみた思いをこぼし
ただただ、早い冬の王の退場を待ちのぞんでいる
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