許されない好奇心/HAL
らではの英雄気取りの気持ちももちろんありました
ただ安全地帯で平和を叫ぶデモになんの意味があるのかとの
なにかを欺いているかのように想っていたのも事実です
またぼくはベルリンの壁が崩壊する一年前に
ポーランドのオスヴェンチムを訪れています
でも正直に告白するならあの中央広場も
ドイツ語ならアウシュビッツと呼ばれる場所を
どれだけの金銭を貰えたとしても
もうそこに赴く気持ちは微塵も持ち合わせていません
こう書きながらぼくは嘔吐感を憶えています
またぼくがその2つの地に向ったことが
正しい或いは意味ある行為だとも想えないのです
忘れたいのにそれが絶対に許されない場所を
ぼくは訪れてしまいましたが
それは自業自得以外のなにものでもないことは
重々に承知のなにもでもないことは分かっています
ただ分かったのは自分が如何に柔な人間であることでした
許されない好奇心によってこの先も死ぬまで
罰は与えられて当然だと想えることと
戦争のなかではどんなひとも
一種の気違いになるということだけでした
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